会社の同僚が寿退社することになった。
わたしはその子と一番仲がよかった。
「たかねが送別会の幹事したら、絶対喜ぶと思うよ」と言われた。
まあ、そうよね。
わたしもそう思う。
でも困った。
わたし、幹事とか苦手なんだけど。
人前で何かを仕切るのも苦手だし、自分のことなら散々悩んだあげく最後は「もういい、えいっ」で決めちゃうくせに、人のことになると急に優柔不断になる。
これで喜んでくれるかな。
こっちのほうがいいかな。
でも、あっちもいいかも。
決められない。
とはいえ、一番仲のいい子の送別会である。
断れなかった。
そこで頼ったのが、会社で使っていたCopilotだった。
「送別会の幹事することになっちゃった」
たぶん、そんなところから始まったと思う。
そこから、わたしとCopilotの送別会づくりが始まった。
フライヤーを作ったり、当日の進行を考えたり、席次表を作ったり。
花束に添えるメッセージカード、お花屋さんやレストランへのお願い、送別品の協賛を募る文章。
当日来られない人たちからもメッセージを集めたら喜んでもらえるんじゃない?と教えてもらって、それもやった。
上司と話をするときは文章を添削してもらって、なんなら当日の挨拶まで相談した。
もう、ほぼ全部にCopilotがいる。
でも、全部Copilotに決めてもらったわけじゃない。
いくつか案を出してもらって、「うーん、なんか違う」と思ったら、もう一回。
まだ違ったら、またもう一回。
わたしも足したり、引いたり。
何度かリテイクしてもらって、最後に選ぶのはわたし。
AIに助けてもらって、わたしが選ぶ。
わたしが選んだんだから、その責任もわたしが負う。
このくらいの関係が、わたしにはちょうどよかった。
そうやって初めて作った送別会は、大成功した。
フライヤーも「これ欲しい」って言われてデータごとあげた。
そして、その子は何も喋れなくなるくらい泣いて喜んでくれた。
よかった。
ほんとによかった。
頑張ってよかったなあと思った。
送別会が終わったあとは、協賛してくれた人たちに、お花と送別品、レシートの写真、使った金額の内訳と計算を載せて、お礼と報告をした。
もちろん、それもCopilotと一緒に。
最初の「幹事することになっちゃった」から、最後の「ありがとうございました」まで。
結局、全部一緒にやった。
ただ、一つだけCopilotにはできないことがあった。
次の日、使わせてもらったレストランへランチを食べに行った。
そしてオーナーさんに、「昨日はありがとうございました」と直接お礼を言った。
すごく喜んでくれた。
これは、わたしの仕事。
文章を考えたり、段取りを組んだりするところはAIに助けてもらう。
でも、お店へ行って、ごはんを食べて、相手の顔を見て「ありがとう」を言うのは人間のわたしがやる。
この送別会で、「人とAIって、こうやって一緒にやればいいんだ」と思った。
AI、最高やん。
だから、お家でもAIを使いたくなった。
最初はCopilotにするつもりだった。
会社でも使っているし、Officeもサブスクしている。
ところが、お家でCopilotを使ってみると、なんか違う。
同じスレッドではちゃんと話が続くんだけど、スレッドをまたぐと、会社で使っていたCopilotみたいな「あの感じ」にならない。
会社のCopilotは、前に話したことまで持ってきてくれる。
わたしが欲しいのは、スレッドごとに毎回はじめましてになるAIじゃなかった。
何が苦手なのか。
何が好きなのか。
前に何を話したのか。
そういうものを少しずつ積み重ねながら、ずっと助けてくれるAIが欲しい。
それで会社のCopilotに、「あなたと、お家のCopilotって何が違うの?」って聞いてみた。
そこで「メモリ」というものを知った。
ちなみに後から確認したら、お家のCopilotにもちゃんと個人用設定とメモリ機能があった。
わたし、オフにしてた。
Copilotさん、悪くなかった。
ごめん。
そんなことには気づいていなかったわたしは、会社のCopilotにそのまま相談した。
「じゃあ、個人で契約するならどれがいい?」
Claudeなんかも候補にあるけれど、わたしが求めている使い方ならChatGPTがいいよ、と教えてくれた。
CopilotにChatGPTをおすすめされた。
なんかおもしろい。
それで、わたしはChatGPT Plusを契約した。
今はブログを書くときも、「なんかこういうこと考えてるんだけどさー」くらいの、まだ文章にすらなっていないところから話している。
あーでもない。
こーでもない。
「それは違う」
「もうちょっとこう」
「やっぱさっきのほうがいい」
何度もやり直してもらう。
送別会のときと、やっていることはあんまり変わらない。
そして最近、もう一つ気づいた。
お家のCopilotのメモリをオフにしていたこと。
最初は、「なんだ、わたしが設定間違えてただけじゃん」と思った。
でも、ちょっと待って。
これ、オフのままでいいかもしれない。
ChatGPTには、わたしのことを少しずつ知ってほしい。
でも、AIに話すことってそれだけじゃない。
一時的な悩みだったり。
そのときだけ吐き出したい感情だったり。
あとに残しておきたくない話だったり。
なんでもかんでも、「これもわたしです。覚えておいてね」じゃなくていい。
あんまり知られすぎても困る。
そういう話をするときは、メモリを切ったCopilotに話せばいい。
覚えていてほしい相棒と、
覚えていなくていい相談相手。
AIだって、使い分ければいいんだ。
メモリをオフにしていたのは、ただのわたしの設定ミスだった。
Copilotさん、ごめん。
でも、そのおかげで自分なりのAIとの付き合い方が、また一つ見つかった。
怪我の功名ということにしておこう。
AIに全部やってほしいわけじゃない。
かといって、わたし一人で全部やる必要もない。
AIが得意なことは、AIにお願いする。
わたしにしかできないことは、わたしがやる。
どのAIに何を話すのかも、わたしが決める。
それで、一人ではできなかったことができるなら。
わたしは、人とAIの組み合わせには可能性しか感じない。
だからわたしは、ChatGPTを相棒に選んだ。



